[今週の一言] 2010年9月3日号

■「小沢首相」なら国民は民主党を見放す■
民主党議員は政治の常識を学んで投票を


 民主党の代表選挙が始まった。これは党規約に則って行われているものだが、1日の選挙告示に至る過程で、健全な政治常識では考えられないことがいくつも起きている。民主党員、とりわけ国会議員は政治の常識を学び直した上で、国民の負託に恥じないように「次の総理大臣」を選んでほしい。

 これまでの起きた非常識の第1は小沢一郎・前幹事長の立候補である。小沢氏は10月以降の早い時期に提訴される可能性がある。今年2月、東京地検が政治資金規正法違反容疑で捜査していた小沢氏を嫌疑不十分で不起訴処分にした。これに対して、同4月、第5東京検察審査会が「起訴相当」の判定を下し、10月にも2回目の「起訴相当」の判定を出す可能性があるからである。そうなれば、小沢氏は強制的に起訴される。

 小沢氏が首相になった場合、2回目の「起訴相当」の議決が下されても、小沢氏の意向次第では、憲法の規定を利用して訴追を逃れることができる。しかし、小沢氏は2日、日本記者クラブ主催の代表候補討論会で、「逃げない」と明言した。そうなると、私たちは「裁判を受ける宰相の誕生」という主要先進国ではほとんど例のない不名誉なケースを想定せざるをえない。

 「裁判を受ける首相」が国内的にも国際的にもまともに機能するとは考えられない。また、小沢氏は自身の政治資金の処理を巡って元秘書が3人も起訴されたにもかかわらず、他党の要求を拒否して、国会での弁明を1度も行っていない。これでは、小沢政権が実現した場合、国会運営が順調に行くとは考えられない。最悪の場合、審議は政治とカネの問題が障害となって臨時国会冒頭からストップし、予算関連法案を含むほとんどの法案が不成立に終わることも考えられる。

 こうなったら政治は大混乱に陥り、円高・不況対策も進まず、「日本沈没」が現実味を帯びてくる。小沢氏に近い若手国会議員の多くは、上に述べたシナリオは「猛暑の夏の夢」と考えているかもしれないが、常識的に考えれば、正夢になる可能性は70%を超える。

 小沢氏の行動に対する疑問はまだある。彼は6月、政治資金問題や普天間基地問題などで行き詰まった鳩山前首相とともに党幹事長を辞任した。したがって、参院選惨敗の直接的責任はないが、小沢、鳩山両氏の政治資金問題が最大の敗因であったことは間違いない。“A級戦犯”ともいうべき小沢氏が辞任からたった3ヶ月後に党代表と首相を目指すとは。
事実上の首相レースに立候補する大義名分など不要だというのだろうか。

 非常識の第2は、鳩山前首相の菅、小沢両氏を仲介する行動であった。鳩山氏は政権交代後の希望に満ちた民主党を中心とする連立政権を破綻させた張本人である。一時は大失敗を反省して、政界引退を表明した。ところが、引退を撤回しただけでなく、小沢氏復権のために菅・小沢両氏の仲介役を買って出たのである。鳩山氏は小沢氏以上の“戦犯”であるのだから、党分裂を避けるという狙いが正しいとしても、仲介役になる資格はない。資格のない人が買って出た仲介が成功するはずがない。

 菅首相の参院選中の消費税問題をめぐる迷走は敗因の1つであることは確かである。首相としてのリーダーシップも、これまでのところ、国民を満足させるまでに至っていない。だからといって、民主党員が菅氏をたった3ヶ月で首相の座から追うのは筋が通らない。各種の世論調査で、菅内閣継続支持が70〜80%に達しているのは、国民の大多数が「首相を3カ月で変えることは国益に反する」と考えていることを示している。民主党国会議員は6月の代表選で菅氏を選出した時、最低1年間、菅内閣を支持える決意を固め、今回の代表選は菅代表の信任投票に留めるべきであった。

 小沢氏の強力な支援で当選した国会議員が小沢氏に感謝するのは当然であろう。しかし、議員になったら物事の評価基準を、国益―地域益―党益―個人益の順に変えてほしい。また、少なくとも議会制民主主義、社会の倫理状況、世界における日本の立場を学んでほしい。代表選の投票はそれからにしてくれないと困る。

 菅対小沢の全面対決になった以上、小沢派、反小沢派とも本音で議論を交わすのがいい。選挙が終わったらノーサイドが望ましいが、小沢氏支配の民主党より分裂→政界再編成の道をたどる方がましかもしれない。これが一般国民の常識的判断ではないか。
          
(早房長治、9月3日記す。)